福島からの声



2015年分

福島からの声 2015年12月

今回の「福島からの声」は、藤島昌治さんの詩集「仮設にて」からの連載の最終回です。

先日の場の研究所の勉強会では〈いのち〉の医療についての清水先生からのお話を頂きながら、「居場所」が失われることの苦しみとその深刻さについて議論を深める機会がありました。

私たちが心に「故郷」として描いていけるような居場所では、その居場所を舞台として、そこに暮らす人々や生きものたちが役者のように活き活きとした演技を演じながら〈いのち〉のドラマを創り続けています。そのことが私たちに深い安心と生きていく力を与えてくれているのです。しかし、その舞台が無残なかたちで奪われたり、無理やりに時間を押しつけられたりしてしまえば、〈いのち〉のドラマは止まってしまいます。そして、心身までも蝕んでいってしまうのです。

今も福島で起こっている問題は単なる除染や復旧だけで片付けられるような問題ではありません。

居場所としての舞台を失い、時間を止められた方々の〈いのち〉に関わる問題であるということを私たちはもっと深く考えていかなくてはなりません。

藤島さんの

・・・福島はもはや「フクシマ」になった・・・・

という言葉からは、「福島」という大切な居場所の〈いのち〉を奪われ、「フクシマ」という虚ろな空間と化してしまったことへの、言葉にならない悔しさや虚しさ、苦しみが伝わってくるのです。(本多直人)

 

(編集部 本多直人)

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福島からの声 2015年10月

今回の「福島からの声」は、藤島昌治さんの詩集「仮設にて」から詩の連載の第4回目(連載は5回を予定しています)です。

川内原発の再稼働を機に、高浜原発、伊方原発と、全国の原発の再稼働への準備が次々に進められつつあります。経済優先の社会を声高々に掲げ、人々の故郷を根こそぎ奪った原発の抱える根本的な問題を覆い隠すかのようにして進んでいく先に、私たちが本当に安心して子供や孫たちに託すことの出来るような居場所の未来を描いていくことが果たして出来るのでしょうか。

今回ご紹介させて頂く藤島さんの3篇の詩からは、伝える術すら失ってしまうほどの不条理と苦悩の中にありながらも、それでも互いが心を支え合い、仮設住宅でささやかに暮らしを続けている姿が伝わってくるようです。

「福島からの声」が過去からの声ではなく、私たちの居場所の未来に向けた、大きな力を持ったメッセージであることをつくづく感じさせられます。

それは決して風化させてはならない、居場所の〈いのち〉からの呼びかけなのです。

(編集部 本多直人)

 

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福島からの声 2015年9月

今回の「福島からの声」は、藤島昌治さんの詩集「仮設にて」から詩の連載の第三回目です。

川内原発をはじめとして原発の再稼働が、なし崩し的に進められようとしていることに言いようのない大きな不安を感じているのは私だけではないと思います。

 

私たちは、福島原発事故による放射能汚染の甚大な被害と居場所の崩壊という厳しい現実に直面している方々の声に耳を傾け、深い反省に立ってそこから学んでいくより他に、本当の居場所の復興に進む道はないと思います。

 

この「福島からの声」は私たち自身の〈いのち〉の居場所の声なのです。

(編集部 本多直人)

 

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福島からの声 2015年7月

今回の「福島からの声」は、連載ということで前回に引き続き、藤島昌治さんの詩集「仮設にて」から詩を四篇、ご紹介させて頂きたいと思います。

一篇目の「七夕」では、ご自身の大切な故郷である福島が、核の被爆地の広島、長崎のように記号化された「フクシマ」と呼ばれることへの複雑な想いが、二篇目の「2020年 東京オリンピック」では、日本全体が経済の拡大に目を奪われ、私たちの存在に関わる大切な居場所の問題が、取り残されるようにして人々の心から風化しつつあることへの強い懸念を、三篇目の「不思議な言葉」では、原発事故で奪われた大切な居場所が、マスコミの報道のような外側からの目線ではなく、その内で暮らす人々の心にどのような苦しみとして、また異常さとして映っているのかを、そして四篇目の「東京電力株主総会」では、生きていくための場所を奪われたことへの不条理、例えようのないほどの強い憤りと怒りが伝わってきます。

福島原発の問題は今も拡大し、進行し続けている放射能による最悪の災害の問題です。

私たちが未来の居場所づくりを真剣に考えていくのならば、この問題を決して風化させることなく、常に心に刻み込み、私たち自身の問題として深く掴みながら一歩を進めていかなくてはならないということを藤島さんの詩は改めて教えてくれているように思います。

(編集部 本多直人)

 

 

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福島からの声 2015年6月

今月からの「福島からの声」は、若松丈太郎さんにご推薦を頂きました、藤島昌治さんの詩集「仮設にて」から、連載というかたちで詩をご紹介させて頂きたいと思います。

藤島さんの仮設住宅での暮らしの中から紡ぎ出されるようにして詠われる貴重な詩の一篇一篇からは、原発の問題がどれほどの力で〈いのち〉の居場所を壊し、そこに暮らしてきた人々や生きものたちを苦しめてきたのか、痛いほどに伝わってくるようです。

私たちの未来につながる居場所づくりを、本当に真剣に考えていくのであれば、この詩から伝わってくる、推し量ることのできないほどの深い苦悩の声から、決して目を逸らしてはならないと強く感じます。(編集 本多直人)

 

 

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福島からの声 2015年5月

今回の「福島からの声」は、前回に引き続き、福島原発の放射能の被害によって南相馬の故郷を奪われた、渡部哲雄さんが出版された短歌集『つぶやき』(民報印刷)の中から、前回紹介しきれなかった「福島からの声」を伝える短歌を、福島県南相馬市在住の詩人、若松丈太郎さんのご協力も得て掲載させて頂きます。

東日本大震災から4年を経た今、テレビから流れてくる報道の内容を見ていると、社会全体がいつの間にか目先の経済の動向に目を奪われて、私たちにとって何よりも大切な居場所としての地球の未来を脅かすほどの深刻さを持つ、原発事故の問題への社会の関心が薄れ始めていることを感じ、強い危機感を覚えることもしばしばです。

連載させて頂く渡邊哲雄さんの短歌による「福島からの声」は、人間社会に対しての地球からの声であると言っても過言ではないように思います。

今だからこそ、その声に向き合って、これからの私たちの居場所づくりへの一歩を考えていかなくてはならないのではないかと思っています。

 

 

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福島からの声 2015年3月

今回の「福島からの声」は、福島原発の放射能の被害によって南相馬の故郷を奪われた、渡部哲雄さんが出版された短歌集『つぶやき』(民報印刷)の中から、「福島からの声」を伝える短歌を、福島県南相馬市在住の詩人、若松丈太郎さんのご協力も得て掲載させて頂きます。

近年、ますます複雑化する中東問題や経済の先行きへの不安が、情報の渦となって私たちの心までも覆い隠してしまい、最も身近な脅威である原発事故の問題への関心が大きく薄れてしまっていることに複雑な焦りを感じることがあります。関心が薄れてしまうことの怖さ。それは、私たちの未来の居場所を奪い、その〈いのち〉までも奪うことに等しいものです。

今回のご紹介させて頂く渡部哲雄さんの何の飾り気もないまっすぐな言葉で綴られた短歌「つぶやき」の一つひとつの歌からは、ややもすれば、復興の陰に隠れてしまいそうな人々の本当の苦しみの声だけでなく、同じように居場所を追われた生きものたちの声までもが、深く心情に訴えてくるように感じます。(本多直人)

 

 

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