場の研究所メールニュース 2016年12月号

□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━

場の研究所 定例勉強会のご案内

□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━□━

 

 

ホームページ:http://www.banokenkyujo.org/

 

 

------------------------------------------------------------

「〈いのち〉を居場所に与贈して〈いのち〉の与贈循環を生み出そう」

〈いのち〉とは「存在を続けようとする能動的な活き」である。

                                                  (清水博)

------------------------------------------------------------

 

◎11月の勉強会テーマ:「おたがいさま」「おかげさま」について、

エーザイ株式会社の知創部長 高山 千弘様に担当頂き、11月18日

(金曜)に開催しました。

 

15時から17時までは、ワイガヤということで、清水先生の金沢工大時代の

場の研究の資料の紹介や、場の考え方の基礎編的な情報交換をしました。

 

高山さん講演の前に、11月11?12日に松江で開かれた「全国おたがいさま

交流集会」での清水先生のプレゼン資料を先行で紹介し、レベルの整合を

行いました。

 

このプレゼン内容は前川理事がアレンジして説明いたしました。

 

ワイガヤテーマ

1.『場の研究』金沢工業大学 清水 博

 自己を初めて科学的研究の対象としたシナリオ。

 自己の2領域構造を卵モデルで説明。

 偏在的自己と局在的自己のモデル。

 コミュニケーションの原理。

 共存材の原理の発見。など。

 

2.『創出サイクルについて』日本の哲学 特集:生命 一部紹介

 ロイスの自己表現的システム:創出サイクルと場所的自己言及の関係を

 カンパスに描いた自分の部屋とそこに於かれた自分を追求するという内容。

 このイメージを絵にして説明。

 

17:00からは、高山さんのプレゼンの前に、松江で開催された全国

おたがいさま交流集会について、清水先生のプレゼン資料を前川理事が説明。

 

これは、シンポジウムで講演された資料に何枚かスライド追加したものを

ベースにしたものでした。

(当日、清水先生の体調不良のため急遽欠席されたので代行)

 

テーマは『共に生きていく原理を求めて』

副題:「生きている」から「共に生きていく」です。

 

「場のないところで共に生きていくことは難しい!

どうすればその場づくりができるだろうか?」

と言う言葉でスタート。

 

そして「場とは何だろうか?場は自己を包む〈いのち〉!

それは、どうすればできるだろうか?」

と言う問いかけに対し、自己の外在的世界だけでなく

内在的世界もある世界の二領域という概念が重要であると説明。

 

シンポジウムで説明された清水先生の主テーマである、

○理論の創造: 二領域性の上で諸事実の統一的な説明を

可能にする仮説づくりを提言。

 

生活体(生きていくもの)に関する4つの仮説

(1)生命は存在しない。存在しているのは〈いのち〉。

   〈いのち〉=存在を維持しようとする能動的な活き

 

(2)生活体は〈いのち〉を生み出しつつ、

   その能動的な活きによって存在していく。

 

(3)生活体には、生み出した〈いのち〉を、

   自己が存在する居場所に与贈する与贈主体がある。

 

(4)複数の生活体から居場所に与贈された〈いのち〉の活きが一定の

   閾値を超えると〈いのち〉の自己組織がおきて居場所の〈いのち〉

   が生成する。

 

それぞれを説明していきました。

この内容は前回のメールニュースに紹介してありますので

省略いたします。

 

続いて、高山さんから、エーザイ(株)の理念:human health care company

についての説明と今回取り組まれている、テーマである、-おたがいさま

・おかげさまを通じて企業の存在を問う-と言う内容を講演して頂きました。

 

これは、具体的には「健康経営都市」作りと言う企画で、「おかげさま

・お互いさまのまちづくり」の推進ついてご紹介頂きました。

 

 

新たなまちづくりの活動 (高山)

 

エーザイは全国で約500の「認知症の方が安心して暮らせるまちづくり」

を実施している。

 

そのうちの約65の地方自治体と認知症連携協定を結んでいる。

 

現在の主な連携協定内容として参考に横浜市の具体的な活動を紹介する。

 

(1) 認知症に関する理解促進及び認知症の人の人権等に関する

    意識啓発に関すること

(2) 医療・介護・福祉関係者等専門職や市民への認知症に関する

    情報提供に関すること

(3) 行政・医療・介護等の関係機関(者)間の連携強化と支援体制

    づくりに関すること

(4) 認知症の人が暮らしやすい地域づくりを促進するための活動に関すること

 

今後10年間のビジネス機会にインパクトを持ち得る社会的な知見

または洞察から、高齢化社会の課題として、医療・介護の “情報の分断”

がある。

 

端的に言えば、介護現場での患者様情報を“医師が知らない”

という現状である。

 

一方、現在の診療報酬制度に従うと、薬剤を服用させることが難しい

“医療の空白”が存在する。

 

“情報の分断”並びに“医療の空白”を解決することにビジネスチャンス

があると考える。

 

さらに、その知見に基づいて、「将来的なポテンシャルを持った、

黎明期で未開の領域(事業立地)」として、地域包括ケアシステムが

あげられる。

 

国は2025年に向けて地域包括ケアシステムの整備を進めているが、

その地域包括ケアに対するエリア貢献、患者様貢献に、具体的に

踏み込んだ製薬企業はまだない。

 

在宅市場が事業立地と考える。今後10年間のビジネス機会にインパクトを

持ち得る観点からも、今後、ヘルスケア産業は生活者の将来不安に伴い、

医療・介護の非日常の世界から幅を広げ、日常生活を含めたトータル

・ライフ・サービス(TLS)へと領域を拡大していく可能性がある。

 

「将来的なポテンシャルを持った、黎明期で未開の領域(事業立地)」

では、地域コミュニティをベースとした健康に関する「場」を創造する

ことにより、健康予想(発病リスク)による早期診 断・治療への導き

に加え、食のデザイン、ウェルネスデザイン、環境デザインなど様々な

TLSの需要イノベーションが創発され新たなビジネスを展開する必要がある。

 

 エーザイは、今年度からの10ヵ年中期計画で、「地域住民の

Prevention・Cure・Careに貢献」することで認知症連携協定をベースに、

安心基盤と生きがい基盤からなる生活基盤全般における新たな

リビングラボへ導く活動を行う。

 

新たなビジネスチャンスを捉えるには、製品によるチャネルマネジメント

から脱却し、地域住民視点でのリレーショナル・マネジメントへ転換する

ことが求められる。

 

エーザイ自身がその新たなビジネス機会における成功に貢献できる様な

革新基盤やアセットが必要になるが、地域住民主導でリビングラボあるいは

異業種合同会社LLC*を設立することがそのひとつである。

 

運営においては、エーザイがファシリテーションするとともに、エーザイが

提供するICTプログラムによる日々の健康状態予報、健康予想情報を地域

住民一人ひとりへ提供する。

 

それによって一つは健康未来予想情報の活用による適切な医療・介護へ導き、

もう一つは参画企業オペレーションとTLSの市場セグメンテーションの

マッチングを行い、結果として利益を得る。

 

このLLCはLimited Liability Companyの略で、自立型地域包括システム

を実践するリビングラボまたは合同会社である。

 

LLCは、地域(住民・地域団体・行政)の不安や悩みを解消するだけでなく、

そこに暮らす人々がいきいきと過ごしていけるために、暮らし全体の充実を

図ることを目的とする。

 

暮らしの充実を図るためのまちづくりは、「あんしん基盤」と

「いきいき基盤」の2つの基盤を整え、充足することで、まちの姿に

合った持続可能な体制づくりが可能になると考えている。

 

リビングラボからLLC(合同会社)を設立するエーザイの役割は、

コミュニティでイノベーションをスパイラルアップすることである。

 

コミュニティごとに、地方自治体、住民、NPO/NGO、企業連合などが

中心となって、合同会社である公共地域健康法人を設立する。

 

健康経営などを活用し、LLCのファシリテート役を担い認知症だけ

ではなく、自立型地域包括システムを実践できるまちづくりを行う。

 

すなわち「おかげさま・おたがいさま」のまちづくりである。

 

LLCの実行可能性は、現在、横浜市と、ダブルケア(子育て・高齢者)、

認知症、少子高齢化、女性・高齢者雇用などへの取り組みに活かせないか

検討を開始している。

 

すでに、現場の意見集約のために住民のワークショップを開催した。

 

神戸市とは健康経営に関するLLCを本年6月に設立した。

 

また、岩見沢市は本年6月に健康経営都市宣言を行い、この健康都市

づくりに参加している。

 

さらに、福岡市などの大都市とともに、認知症協定を結んでいる

65市区町村を核に全国にLLCを立ち上げる。

 

以上のように、企業のアクションとして大変有意義なお話でした。

ご参加頂いた方々有り難うございました。

-----------------------------------------------------------

 

■勉強会のご案内

 

テーマ:「場の研究所の今年の総括と来年の展開について」

 

日時:12月16日(金曜)17時から19時30分までの予定です。

 

今年最後の勉強会ですので、清水先生を中心に、今年の総括と今後の

「場の研究所」についての提案と議論をしたいと思います。

 

従来通り15時からワイガヤ的に議論を進めて、17時より勉強会を行います。

 

場所:特定非営利活動法人 場の研究所

 

住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3

 

Email:info@banokenkyujo.org

 

参加費:会員…5,000円 非会員…6,000円

 

申し込みについては、毎回予約をお願いいたします。

  (なお、飛び入りのお断りはしておりません。)

---------------------------------------------------

 

 

■編集後記

今回は残念ながら清水先生は欠席でしたが、前半は清水先生の昔の資料

の紹介をしながら、場の理論の基礎的な考えのレベル合わせを行いました。

 

後半は高山さんのエーザイ(株)の取り組み、企業理念と実際の

アクションを紹介頂き、みなさん驚きと感動を受けていました。

 

英国のEU脱退、米国におけるトランプ次期大統領の選出など、

世界が新しい動きを見せています。

 

この激しい流れのなかで、私たちは何を目指してどのように

生きていけばよいのでしょうか。

 

次回はこのことを頭において、今年の総括と今後の方向性について

議論したいと思います。

 

従来通り、第3金曜日の12月16日(金曜)に開催いたします。

 

よろしくお願いいたします。

 

 

特定非営利活動法人 場の研究所

住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3

電話・FAX:03-5980-7222

Email:info@banokenkyujo.org

ホームページ:http://www.banokenkyujo.org