場の研究所は、日本ナレッジ・マネジメント学会の後援のもとに、第三回共存在企業研究会を開催します。
共存在企業研究会は、人としての主体性と生き続けたいという願いを互いに大切にして、少数派や、弱い立場にある人者たちも差別なく共に存在していく共存在思想に基づく企業経営を目指した研究会です。
現在、人工知能への期待の高まりから、人工知能を基軸に据えた事業展開を目指す企業が増えています。
優れた記憶力と分析力をもっている人が多くの経験を積むだけでは、一流のプロ棋士にはなれず、さらに創造的な知能が必要であると世間では広く信じられています。
最近、その一流のプロ棋士が深層人工知能(deep AI)を相手に戦って、負けることが多くなってきたというより、勝つことが難しくなってきたことから、深層人工知能が複雑な思いで注目されています。
また深層人工知能がこの調子で進歩をしていくと、2020年には人工知能の知能が人間の知能に並ぶ「シンギュラリティ」(特異点)がやって来て、2045年には人間の知能の10億倍の能力をもつようになるとも言われています。
このようなブームの尻馬に乗ったのか、人工知能による自動車の自動運転が近い将来にできるようになるというようなことをマスコミも言っています。
もしもそうであるならば、人工知能を上手く取り込んでいかなければ、企業の経営も危ないということになるでしょう。
そこで今回の研究会では、人工知能の知性と、人間の知性とを比較して、それぞれの特徴を明らかにすることを第一の目標といたします。
そもそも、この知性の性質が根本的に異なるものであれば、「シンギュラリティ」という考え方自体が成り立たないわけですし、またそれぞれの特徴を掴むことが、企業の人工知能導入の戦略にとって重要なポイントとなる筈です。
今回はNECで人工知能を実際に研究していたばかりでなく、このような問題点をおさえて書かれた『人工知能の哲学』(東海大学出版から近々出版予定)の著者である松田雄馬博士による人工知能に関する講演と、その本を書評した場の研究所長清水 博による人間の知能の特徴に関する講演を企画いたします。
【日時、申込み】
・開催日:2017年4月8日(土)13:30-18:00 (受付:12:30より)
・会場:エーザイ株式会社本社ホール/東京都文京区小石川4-6-10
・参加費:3,000円
・申込方法
1)Eメール
場の研究所事務局へ下記をご記載のうえ、Eメールにてお申し込みください。
1.会員の種別(個人・法人) ※非会員のご記入は不要です。
2.氏名
3.所属先
申込先E-Mailアドレス:平丸(場の研究所) bahiramaru@gmail.com
※ 申込メールの件名:「4.8参加申込」
2)参加申込フォーム
>> 「第3回 共存在企業研究会『AIと場』」参加申込フォームへ
【特定非営利活動法人 場の研究所】
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
電話:03-5980-7222
ホームページ: http://www.banokenkyujo.org
【プログラム概要】
★指定参考文献:清水 博 最新著書『〈いのち〉の自己組織』 東京大学出版会発行
共存在企業研究会の開催にあたり
民主主義と資本主義経済が成り立つために必要なことは、それらが共存在思想の下にあることです。共存在思想とは、人としての主体性と生き続けたいという願いを互いに大切にして、政治や経済での多数派ばかりでなく、少数派や、弱い立場にある人者たちも差別なく共に存在していくことを、つまり政治や経済の利益の前にすべての人びとの存在を優先させて考える思想です。それは、〈いのち〉の全体性の優先ということでもあるのです。
貴重な〈いのち〉をいただいて地球の上に生まれてきた自分という「存在」だけでなく、それと同様な他者の「存在」も大切にする。その存在には、主体性や願いがありますから、一緒に生きていることだけの「共生」という概念とは異なっています。政治的な意見の差や文化の差、社会的な地位の差、貧富の差、人種の差、信仰の差などよりも、主体的な存在とその存在を続けたいという願いがまず大切にされるのです。そしてさらにこの思想を、可能な限り類と種を超えて、地球に広げていくのです。
この共存在思想を受け入れると、自分の存在が他者に喜んでもらえることが自分の生き甲斐になり、大きな喜びになりますから、互いにその様に振る舞い、また努め合う「共存在の深化」という活きが人びとの集まりに生まれてきます。その共存在の深化のために必要なことは、自分たちが存在する居場所へ、自分の〈いのち〉を与贈することです。
ここで〈いのち〉とは、すべての生きもの(生活体)がもっている「存在を続けようとする能動的な活き(はたらき)」のことであり、それは生きものの本能的とも云えるものです。生きものは〈いのち〉をつくりながら生きていきますから、〈いのち〉を居場所に与贈しても、死ぬことはありません。居場所に〈いのち〉が生まれると、逆に居場所からその〈いのち〉の与贈を受けて、生き生きと生きていくことができます。このことを「〈いのち〉の与贈循環」と言います。
20世紀は国民国家の時代でしたが、21世紀は地球文明の時代です。文明が発達して地球全体における互いのつながりが強くなって産業と経済のグローバル化がおきているために、いつまでも20世紀の国民国家の進歩思想に縛られて成長競争をしていこうとしていると、国家の間の矛盾が地球にしわ寄せられていき、たとえば温暖化現象のような変化がおきて地球の未来を危うくしてしまいます。また、そればかりでなく、それぞれの国にも、グローバル化による矛盾が蓄積されてきます。たとえば日本では若年人口の大都市への集中がおきて、住民の高齢化と共に地方の過疎化の問題がますます深刻になってきています。またアメリカでは、今回トランプ大統領の選出におおきな力を発揮した「ラストベルト(さび付いたベルト)」と呼ばれる地域の深刻な経済状態がそれに相当します。世界的に見れば、大量の移民によって深刻な政治的・経済的問題もまた生まれています。そのような深刻な矛盾の結果として、民主主義も、資本主義も、制度は存在しても、もううまく機能しなくなっているのです。
21世紀には、地球を居場所として、共存在思想を柱とした政治と経済のシステムをつくることが必要ですが、いま世界で起きている変化は、「もの」を中心とした20世紀的なグローバル化システムから逃げて、一国だけの「ひと」を中心にしたシステムという旧い国民国家のようなシステムに戻って、住民の間に蓄積されてきた矛盾を解消していこうとする動きです。これまでグローバル化システムの矛盾に苦しんできた人びとは、この変化によって深刻な矛盾から逃れられるような気がしているようです。そのことは錯覚ですが、しかし「もの」から「ひと」へという変化自体は共存在状態をつくるためにも必要なものであるために、当面の変化がすべて間違いであるとも云い切れないわけで、それなりの支持を集めていく可能性があります。共存在という観点から大切なことは、ものを売ることより、人びとの生活の幸せを目的においていくことであり、幾つかの地域で広がっているお互いさま活動は、共存在運動の具体的な例でもあります。
今般、エーザイ株式会社のご協力で、この様な会合が開催されますので、これからの地球規模での会社のあり方について、皆さまと共に議論し、また将来へのアクションへつなげていきたいと思います。
お集まり頂いた各企業の皆さまと共創の場をクリエーションしていければと考えております。
場の研究所 清水 博
【特定非営利活動法人 場の研究所】
清水 博
NPO法人「場の研究所」所長
東京大学名誉教授
【略歴】
1932年愛知県生まれ。薬学博士。東京大学医学部(薬学科)卒業、同大学院修了後、東京大学理学部助手、千葉大学文理学部助教授、九州大学薬学部助教授、ハーバード大学研究員、スタンフォード大学研究員、九州大学理学部教授、東京大学薬学部教授、金沢工業大学「場の研究所」所長・同大学情報工学科教授を歴任し、2004年よりNPO法人「場の研究所」所長(理事長)。
主な著書に『生命を捉えなおす』(中公新書)、『生命知としての場の論理』(中公新書)、『生命と場所』(NTT出版)、『場の思想』(東京大学出版会)、『コペルニクスの鏡』(平凡社)、『< いのち> の普遍学』(春秋社)、『近代文明からの転回』(晃洋書房)など。
会場
エーザイ株式会社本社ホール
住所:東京都文京区小石川4-6-10
以上。