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場の研究所メールニュース 2018年7月号

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場の研究所 定例勉強会のご案内 

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  ホームページ:http://www.banokenkyujo.org/ 

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「〈いのち〉を居場所に与贈して〈いのち〉の与贈循環を生み出そう」 

〈いのち〉とは「存在を続けようとする能動的な活き」である。 

                         (清水博) 

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2018日年7月のメールニュースをお届けいたします。   

 

◎2018年6月の勉強会は従来の通り場の研究所で6月15日(金)
に開催いたしました。

15時からは、前川理事からIIBAでのシンポジウムでのプレゼン
の簡単な紹介がありました。これは、以前、場の研究所でも紹介
したホンダの“ワイガヤ”文化(共創文化)の話と場の理論での
考え方で企業における共創の場のどう作って行くかについての
話でした。
特に、ワイガヤにより集合的志向性が生まれ、志向的ベクトルが
同じ方向に向かうことで、良いマネージメントが醸成されるという
内容で、その進め方により、車のコンセプトが明確になっていない
状況のなかで、ある一つの発想が生まれ、ワイガヤでどんどん肉付け
して、一気にコンセプトがまとまったという例を紹介。
これについてみんなで議論しました。
(ワイガヤとは、上下関係や専門的な領域を超えて、各人が自由に
意見を言い合うことです。)

さらに、スタッフの小林剛さんが、前回と同様に、清水先生のお話
に出てくる言葉や考えで、「分からないこと」を「分からないまま」
で、無理に解決しようとせず、どのような分からなさがあるのか、
互いに了解し、共有し合う、ということを行いました。

その中で、「”与贈”について、もう少しわかり易いイメージを作り
たい」という話に対しては、清水先生から、「与贈の絵の説明は認識
としてとらえると分からなくなるので、自分の意識としてとらえる
ことが必要」とコメントをいただきました。


17時からは、前回ご案内したように
講師は本多直人会員で仙台徒手医学療法室SORA 代表
テーマ:〈いのち〉の医療「与贈技術としての手当の実践の場から」
というテーマでお話をいただきました。
これまで同様「場の理論」と「生活体」という概念を、実践の場で
ある患者さんの治療の中で感じられる場の考え方を説明してください
ました。

少々長い内容ですが、当日の資料をご紹介します。

★勉強会の内容

◎本多先生からの講義(配布の資料より)

~場の治療技術を考える~
H30.6.15 仙台徒手医学療法室SORA 本多直人

〈いのち〉の医療

 

場の研究の基盤:「〈いのち〉の二重性」(二重存在)

 

1.〈いのち〉の二重性:

・居場所の〈いのち〉・身体の〈いのち〉・細胞の〈いのち〉
の整合的循環

・居場所の〈いのち〉にうまく包まれることができない個の
〈いのち〉をどのように助けていけるのか?

 

2.人間が生きていくためには「二重存在の状態」が必要。

・現代医学(認識の医学):「生きている」ことを支援。
    「生きている」(現在)

・〈いのち〉の医療(存在の:「生きていく」ことを支援。
   「生きていく」(現在から未来へ向かって)

 

・さまざまな障害によって二重存在の状態がうまく作れない
ところに「生きていきにくさ」と共に様々な病が生まれている。

 

・これまでの医学では⇒病理学的な視点がベ-ス。主客分離的

物質的な診方を元に症状をみて痛みをとることが中心 

 

3.〈いのち〉の医療⇒病気とは、この二重の二重生命によって
生まれる居場所、人間、細胞の間の〈いのち〉の共存在性
(二重存在)が崩れて不安定になること

(このことで脳の記号としての痛みや症状が現れていると考える。)


・その安定性を回復するためには、二重存在をつくっている
〈いのち〉の与贈循環を支援すること⇒科学的な近代医療の
方法だけでは生きていくことが困難な人びとの〈いのち〉を、
「〈いのち〉の与贈循環」の活きを活性化することによって
支援する(主客非分離的)

 

・自己の〈いのち〉の与贈から始める〈いのち〉の与贈循環に
よって、生きていく形をつくることができるように支援する。

(痛みを抱えて生きる。病を生きることも含まれる。)

 

4.〈いのち〉の医療における手当

〈いのち〉のドラマの中で治癒へと導かれる。

身体と細胞が舞台と役者としてつくる〈いのち〉のドラマが

うまく進まなくなっている。

 

5.身体呼吸と場

~〈いのち〉の舞台を感じる・〈いのち〉の自己組織を身体にみる~

・触れて感じる〈いのち〉の場

身体とは細胞たちの〈いのち〉の自己組織によって生まれた
〈いのち〉の舞台


・「はら呼吸」は、身体・細胞の〈いのち〉の自己組織の現れ

脳と身体の関係の回復

脳中心に偏る⇒一重的 肩で息をする。

脳と身体のバランスがとれている(二重生命的)。
⇒はら呼吸・場の呼吸

 

6.〈いのち〉の技術

二重生命の治療 BA-therapy

居場所・身体・細胞の〈いのち〉の相互誘導合致の技術

 

7.共創によるドラマによって治る身体

細胞たちの〈いのち〉のドラマが進むかたち

 

8.〈いのち〉の舞台を感じ、身を投じる

純粋に触れる・〈いのち〉の舞台に入る。

そして施すかたちから導かれ、創られるかたちへ

 

9.〈いのち〉の場の里山づくり

ケア-の場(いのちのつながりをつくる)

「病気を治す」から「存在の安心」へ

 

10.場の風船モデルと治療技術

場セラピ-における身体的なアプロ-チとしての三つの技術の柱

 

Ⅰ.純粋同調(場の拡張と待つ技術)

Ⅱ.相互誘導合致の技術(「合わせ」の技術)

Ⅲ.場の呼吸

 

 

11.場の風船モデルを基礎としたケア-の技術

「はら呼吸」と「場の呼吸」

役者と舞台(観客)の相互誘導合致の呼吸

 

12.場の風船モデルの原理

大きな生活体の〈いのち〉に小さな生活体の〈いのち〉が

包まれて共存在が出来るかたちが生まれること

 

13.体験から場の風船モデルへ

触れ、感じ、観るところから起こってくる意識

 

14.場の風船モデルと相互誘導合致の意識

場の意識と自己の意識の釣り合い⇒指先の感覚にも重要

 

15.存在の呼吸と場の風船モデル

病気のときに立ち現れる深い身体全体の大きく揺らぐような
呼吸感

・死へ向かうときの静寂な呼吸感

⇒生死を包む二重生命の呼吸感

(大きな〈いのち〉の舞台の呼吸としての場の呼吸)


・大きな生活体の〈いのち〉が小さな生活体の〈いのち〉に
包まれているときには、大きな生活体の〈いのち〉を続ける
かたちを小さな生活体〈いのち〉がとっている
⇒場の風船モデルの成り立つような関係

 

16.〈いのち〉を尋ね〈いのち〉に出会う

 

宮澤賢治「病床」

 

たけにぐさに

風が吹いているということである。

たけにぐさの群落にも

風が吹いているということである

 

〈いのち〉の峠を歩む道を支えることのできるケア-

 

 

17.〈いのち〉の医療としてのマニュアルメディスン

「〈いのち〉の宇宙には自己組織的な創造の活きがある。

その活きと誘い合いながら、鍵穴と鍵の関係で宇宙を整合的に
映す活きが、宇宙の極くごく小さな一部分である人間の(衆生)
一人ひとりに伝えられて内在している。もしも、人間が「鍵」
を伝えられていないならば、〈いのち〉の宇宙の創造的な活きを
感じることはできないし、また「鍵」をもっていても、それを
「鍵穴」に差し込まなければ同じことである。しかし、その
「鍵」を「鍵穴」に差し込みさえすれば、創造的な〈いのち〉
の宇宙の創造的な一部として、その活きに参加することができる
から、常に我が身にその創造の活きを感じ取ることができる。」
清水博先生

 

18.まとめ

〈いのち〉の医療における徒手療法のケア-の道は、突き詰めて
いけば、施術者自身にとっての自己の探求の道でもあります。
そのことが〈いのち〉への深い慈しみから生まれる与贈の技術へ
とつながっていくことを、私たちに与えられた〈いのち〉の手は
物語ってくれています。私たちを包む大きな〈いのち〉の中に身
を投じ、魂と魂が共に響き合うところに〈いのち〉の医療として
のマニュアルメディスンの技術は、活きた〈いのち〉のアート
として、その真実の探求と共に創造され続けていくのです。

 

居場所のケア-の技術としての三つの柱

〇共存在の深化に心を向ける

○心身から身心へ

○安心の居場所づくり(〈いのち〉の与贈循環が出来る居場所に

 

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◎清水先生コメント:

二重の生命(さらに一般化すれば多重の生命)が「〈いのち〉
の自己組織」によって生まれ、「〈いのち〉の与贈循環」によって
二重存在という状態ができて、生きていく形が生まれる。
この二重存在を継続的に維持していくことに様々な障害が
生まれるのが、「存在の病気」である。

 

現代科学は、したがって現代医学は、一重存在を前提にして
論理的に組み立てられているから、存在の病気に対する組織的な
治療の方法をもっていない。そこで、本多直人さんは〈いのち〉
の医療の目的はこの存在の病気を治療することにあると提唱
されるが、これは私も賛成である。

 

 その上で、具体的な治療に当たっては、細胞、身体、居場所
の多重性を考えて、細胞と身体、身体と居場所の間に〈いのち〉
の与贈循環を考える。ここで身体と居場所の間の与贈循環は
一番分かりにくいものであるが、そこで重要な役割をしている
のが「はら呼吸」と「場の風船モデル」である。風船モデルは、
私が昔考えたものであるが、ここで改めて説明することにする。
まず自分の身体が薄い風船の皮に覆われていると仮想する。

 

そして自分が吐き出す息を自分の身体とその風船の間に吹き
込んでいくことをイメージする。あまり間を置かずに息を吹き
込んでいないと、風船は、自然に収縮して身体にくっつこう
とするので、風船を膨らませるためにはかなり、強く息を
続けて吹き込み続けていかなければならない。このように風船
をふくらまそうとすると、自然に「はら呼吸」を維持していく
ことになる。

 

そのようにして自分が存在している部屋に風船が次第に広がって
いくことをイメージできると、身体が自然に温まってくる。
これははら呼吸によって居場所に与贈された自分の〈いのち〉
がそこで自己組織され、〈いのち〉の与贈循環によって居場所の
〈いのち〉として自分自身を包んでくる状態に相当する。昔は
地下鉄の席に座りながら、どこまで風船を広げることができるか、
周囲の人々がそれを感じるかどうかを試したことがある。本多
先生の〈いのち〉の医療で、身体と居場所の間に〈いのち〉の
与贈循環を生成する活きとして、この場の風船モデルが使われている。

 

 

 

(文責:場の研究所、本多直人、清水 博:加筆)

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■勉強会のご案内

日時:2018年7月20日(金曜日)大塚の「場の研究所」開催。
17時から19時30分までの予定です。
(従来通り15時からワイガヤ的に議論を進めて17時より勉強会
を行います。)

今回は、清水先生から

テーマ:仮題「〈いのち〉の与贈循環とその様々な実践」

という内容で勉強会を実施いたします。

場所:特定非営利活動法人 場の研究所

住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3

Email:info@banokenkyujo.org

参加費:会員…5,000円 非会員…6,000円

申し込みについては、毎回予約をお願いいたします。

  (なお、飛び入りのお断りはしておりません。)


■編集後記
6月は本多先生に〈いのち〉の医療と与贈についての体験的な
興味深いお話を聞くことができました。やはり、実生活の中で
患者さんの治療に場の理論がこれほど生きていることに、参加
された方々が大変驚かれていました。本多先生からも、清水先生
が、実践的な治療という経験がないにもかかわらず、同じ感覚や
考え方を理論化されていることに常に驚いているとコメントが
ありました。
与贈という考えが、世の中に多くあり、必要としていることが
理解できた勉強会だったと思います。

なお、今回のメールニュース配信は、これまでご案内させて
いただいた通り、メンバーの削減をいたしております。
今後の、ニュース配信不要の方がいらっしゃるようでしたら、
場の研究所までメールをよろしくお願いいたします。

7月の勉強会は従来通り第3金曜日の20日に場の研究所で開催
します。みなさまのご参加のほど、よろしくお願いいたします。


情報:「場の研究所のシンポジウム開催」についてのお知らせ

 

9月に従来通りエーザイ(株)と共催でシンポジウムを開催いたします。

日時:2018年9月1日(土曜)13:30-18:00

場所:エーザイ株式会社 大ホール(東京都文京区小石川4-6-10)

是非ご参加をよろしくお願いいたします。

詳細は別途ご案内いたします。(ホームページ含)

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定非営利活動法人 場の研究所
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
電話・FAX:03-5980-7222
Email:info@banokenkyujo.org
ホームページ:http://www.banokenkyujo.org