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場の研究所メールニュース 2018年1月号

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場の研究所 定例勉強会のご案内 

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  ホームページ:http://www.banokenkyujo.org/ 

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「〈いのち〉を居場所に与贈して〈いのち〉の与贈循環を生み出そう」 

〈いのち〉とは「存在を続けようとする能動的な活き」である。 

                         (清水博) 

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新年、あけましておめでとうございます。

今年も、よろしくお願いいたします。

2018日年1月のメールニュースをお届けいたします。   

 

◎2017年12月は従来の通り場の研究所で12月16日(土)に勉強会を開催いたしました。


15時から、前川理事から、10月に新潟で行った哲学塾の内容を紹介し、実際に場における与贈の実践の方々の活動についてワイガヤ的に推進。17時から清水先生の勉強会にとなりました。

 

★勉強会の内容ダイジェスト:前半

〇哲学塾 ~活かし活かされる与贈循環の実践~について

企業も社会に対して見返りを求めずに実践する【与贈】の考え方が広まってきています。【与贈】することによって自社の資源を活かし、その結果社会から活かされる存在となる【与贈の循環】は、これからの企業にとって大きなテーマの
一つになります。そこで、今回の哲学塾では、地域社会に対して与贈を実践する人たちが集まり、それぞれの取り組みと課題を共有いたしました。

 

 

◎ブース出展者

・Eco-Branch(愛知県)

 合成洗剤などでアレルギの起きてしまう方々に、植物とバイオの力で汚れを落とす洗剤を開発。販売。 実績として、アトピーやアレルギのひとはほかの洗剤が使えないので購入していく。これは喜び。

 

・自然栽培新潟研究会(新潟県)

 無施肥料・無農薬の自然栽培は微生物や動植物、地形、気候など多様な生物の生命活動の働きをいかして、作物を育てる。

自然栽培では作物・生き物の働き(生態系)が生かされるように、人が手助けするという考え。共感する人たちと協力して勉強会やイベントを企画・開催。

考え方:「自分が良くなること=全体が良くなること」 

 

・アズワンネットワーク鈴鹿コミュニティ(愛知県)

 会社のために働くのではなく、人のための会社を作りたい。

 誰もが本心で生きられるコミュニティづくりを展開。

①街の中の開放型コミュニティ

②その人らしく生きられる調和型社会

③持続可能な社会づくりの学びの場

という内容を鈴鹿市の中で推進されている。実際に無料で品物や、生産したものを交換したり、高齢者の方へお弁当を届けたり、している。考え方は、コミュニティが家族という考え。お金のやりとりがなくても、支えあう関係ができるという画期的な与贈循環。


・ダーウィンルーム(東京都)

 下北沢で、好奇心の森「ダーウィンルーム」と名前で、「教養の再生」というテーマで運営。学びがゴール。

ダーウィンとリンクする品物(標本や本など)の販売と喫茶、2階に、イベントルームがあり、清水ゼミなど、各種講演会を開催して、みんなで考える場を提供。考える人を応援する所を作りたかった。


・平和堂薬局(新潟県)

長年、薬局をされているかたが、一生薬を飲み続ける患者さんをみて、何かできることはないか?そこで、「食と体の仕組みを知り自然薬で体質改善!楽しみながら元気になれる!」という内容で「体づくり講座」を開催。薬局の中で気づきを得られる場所を作った。高齢者の施設などで講演も行っている。人間の本来の治癒力の向上を導くような活動を推進。
そのためには、人とのつながりを持つことや柔軟な心、前向きな心を持つことがキー。自分も楽しくやることが大切

 

・バウハウス(新潟県)
 障がい者のアートが、今まで出会ったことがなかた感性や 多様な創造力を持つことから、その価値をみなさんに見て もらうために活動スタート。街中の生活空間に展示をお願いした。共感を持った方々がアートを飾ってくれるようになった。
逆に障がい者も街に遊びに出るようになり、新たな出会いやつながりが生まれてきた。

 

実際には、公共・企業・カフェ・観光施設などの生活空間にレンタルし、だれもがアートを鑑賞できる美術館となり、その収入の一部を作者にお支払いして、社会的自立と持続可能な社会を目指して活動中。

 

それぞれのテーマが与贈の働きから、活動が成功していることが理解できました。ご参加いただいた方々ありがとうございました。

 

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★勉強会の内容ダイジェスト:後半
清水先生の勉強会の内容

なお、当初、この勉強会では、黒田亮の『勘の研究』、『続 勘の研究』のお話をしようとしていました。それはこの本の内容が〈いのち〉の科学や場の理論と関係があるからです。

しかし、これらの本は仏教や意識について、ある程度の常識があることを前提としていますので、まず安田理深の『唯識論講義 下』と谷徹『これが現象学だ』(たまたま手元にあった本)で、意識と存在に関する東西の考えを学び、それを基盤にして新年の勉強会では、黒田亮を学ぶことにしたいと思います。

これからの時代は、「持つことから在ることへ」という変化にともなって、「情報から存在へ」=「認識論から存在論へ」という流れが世界的に起こると思いますが、そこで必要になるのが意識に対する基盤的な知識です。その理由は、「存在とは意識」だからです。このことを今回の勉強会でお話したいと思います。

まず、生活体について復習します。
細胞、臓器、人間、家庭、会社、地域、社会、国家、地球への生活体があります。ここで、生活していくという共通の性質の他に、その構造にも共通の法則性がありますが、それは多様な活きをする要素によって秩序が生み出されているということす。

一見、要素の一様な活きが秩序正しい全体の活きをもたらすと考えますが、そうではなく、要素の多様な活きが全体の秩序のある活きを生み出すわけです。企業も多様な人材がいることが重要。これは身体でも言えることで、60兆個と言われる多数の細胞の多くはそれぞれ互いに違った性質をもっています。


このように全体に秩序のある活きを生み出す要素の活きを一様から多様へと転回させるのが与贈です。要素の与贈によって生まれる全体の〈いのち〉が多様な要素の活きを一つにまとめていくのです。このことは私たちの身体ばかりでなく、世界一般の生活体にとっても重要なことなのです。

そして私は要素から与贈される居場所の場が、要素が「役者」として登場する「舞台」として表現され、要素同士が互いの存在の表現を通して、相互依存関係を深めていくという動的なプロセスが生まれて、約60兆個と言われる細胞が互いに矛盾なくそれぞれの存在を表現して、一つの個体の〈いのち〉の活きをつくり出していく原理を考えていきたいと思います。

ここで、生活体とそれが存在する居場所の間には2種類の活きがあることを説明します。
①目で見て認識する活き:それは視覚的に認識した情報を意識します。
  生活体が自己から少し離れたところにある対象を見る
  :主客分離⇒分析的

②自分自身の身体が触接的に感じて知覚する活き:直接的に意識します。
  直接触れ合う距離で身体の活きの変化として知る
  :主客非分離
  であり情報として表現できない。

 例えば: 万年筆で紙に字を書くときは、字を見る視角的な 認識の他に、 
 使い手の使い方のくせと分離できない形でペン と紙との接触のフィーリン
 グが手に伝わってきます。これが、主客非分離的な活きとなります。


唯識論では、「有る(存在する)ものは意識のみである」と結論しています。そして、意識の活きを相分・見分・自証分・証自証分の四分に分けて表現しています。相分は意識されるものの表現、見分はそれを意識する活き、自証分は自己がそのことを意識している活き、証自証分はそのことをさらに意識していく活きです。

19世紀の末に西洋では客観的な実証主義に対する反省がおこり、人間の主体的な活きである存在をできる限り直接的に捉えようとするフッサールの現象学という新しい哲学が生まれました。
フッサールによれば、視覚的な認識も科学が考えているような客観的な活きではなく、目的意識を含んだ主体的な存在の活きであると考えるのです。そして活きとしての存在が対象を主体的に意識する活きであるノエマと、その対象を知ろうとする自己の主体的な活き(志向性)ノエシスからなっていることが示され、視覚的な認識をすぐ主客分離的な科学の理論に乗せて理解しようとするのではなく、ノエマとノエシスに戻して現象そのものを考える「現象学論的還元」が提案されました。

上記で共通している重要な点は、「存在(有)」は人間の意識の活きであり、「存在者(有るもの)」とは異なるという点です。また興味深い事実として、安田理深は(唯識論の方が幅の広い捉え方をしていますが)唯識論の相分と見分が現象学のノエマとノエシスにそれぞれ相当すると言っていることです。
またノエマとノエシスは場の理論(〈いのち〉の科学)の相互誘導合致理論
の「鍵穴」と「鍵」にも相当することから、意識の活きを「鍵穴」と「鍵」として取り扱う「存在の科学」を考えようとしているという話が、清水先生からありました。

次回の勉強会での話になりますが、黒田亮の『勘の研究』を読むと、黒田が「勘」として考えている活きが、相互誘導合致理論の「鍵穴」の活きに相当すると思われることことから、「鍵穴」の活きを一歩広げそして深めて考えることができます。
また「鍵」に対して「鍵穴」が未来の方からはたらいて相互誘導合致の形が生まれることから、それに与贈が加わると進行する時間が生成して「〈いのち〉のドラマ」が生まれます。
このことをフッサールの現象学をさらに発展させたハイデッガーの『存在と時間』と比較することからも、東洋の知と西洋の知を統合して、地球における様々な生活体全体に応用できる興味深い発展が生まれるかも知れません。

 

以上のように、少々難しい内容となりましたが、非常に興味深い内容なので、1月に開催する場の勉強会では、理解度を向上する方向で推進したいと思います。

(文責:場の研究所、清水 博:加筆)

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■勉強会のご案内

日時:2018年1月19日(金曜日)大塚の場の研究所で行います。
17時から19時30分までの予定です。

テーマ:仮題「勘と与贈の関係ついて」
清水先生にお話をしていただきます。

参考文献:黒田亮『勘の研究』、『続 勘の研究』(講談社学術文庫)

従来通り15時からワイガヤ的に議論を進めて、17時より勉強会を行います。

 

場所:特定非営利活動法人 場の研究所

住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3

Email:info@banokenkyujo.org

 

参加費:会員…5,000円 非会員…6,000円

申し込みについては、毎回予約をお願いいたします。

  (なお、飛び入りのお断りはしておりません。)

 

■編集後記
12月は場の研究所で勉強会を実施いたしました。多くの方に参加いただき、感謝いたします。前半部分では、新潟の哲学塾に参加されない方が多かったので、ご紹介いたしました。いろいろな活動内容が聞けて良かったというご意見をいただきました。

新年1月は従来通り第3金曜日の19日に場の研究所で開催します。

昨年同様、本年も場の研究所に対しみなさまのご支援、ご鞭撻を、是非よろしくお願いいたします。



特定非営利活動法人 場の研究所
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
電話・FAX:03-5980-7222
Email:info@banokenkyujo.org
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