今回の「福島からの声」は、前回に引き続き、合同歌集「あんだんて」第十集の中から、根本洋子さんの短歌をご紹介させて頂きます。
震災後8年目、そして平成最後の年となった今年、3日には熊本で震度6弱の地震が発生し、原発を抱える地域の方々はもちろん、私たちにとっても日本全体の原発政策への不安をますます募らせるものとなりました。
地震、火山活動、台風、大雨。日本人はこうした厳しい自然と向き合いながら、暮らしを営み、歴史を創ってきたのです。このことを私たちは改めて心に刻みながら、未来の居場所の在り方を問い続けていかなくてはなりません。
根本さんの短歌からも伝わってくるように、福島原発事故の問題は、まだ何も終わっていません。これほどまでに重要な問題の本質を置き去りにし、十分な反省のないままに、未来を描くことなど決して出来ません。オリンピックや、実体の伴わない好景気に目を奪われ、私たちの存在を脅かし続けている本当の問題を置き去りにしまうことのないよう、そして決して風化させることないよう、「福島からの声」に心の奥底から耳を傾け、短歌の中にあるオリ-ブに込めた願いを持って復興への一歩を進めていくことがますます求められているのです。
(本多直人)
原発の 事故の始末もつかぬまま この平成も終らむとする
責任者 在らずといふや原発の 事故で廃校・休校なるも
(双葉郡小・中・高・私立高・幼稚園)
歌い継ぐ 生徒も無くて校歌には多いフレ-ズ「未来を拓く」
避難指示 受けて休校となる高校 校舎前にはフレコンバッグ
(県立浪江高校)
原発の 記事にカタカナまた増えし トリチウムなる水の放出
シュ-ベルト 訛つたみたいと戸惑った 日常語化したシ-ベルトなり
内陸の 一村多くが解体す あの日の風はここを吹きぬく
(浪江町立野地区)
解体で 更地になりし集落に オリ-ブの若木風にそよげる
復興の 一歩といひいてオリ-ブの 植ゑし人らの思ひ根づけよ