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場の研究所メールニュース 2019年07月号

このメールニュースはNPO法人「場の研究所」のメンバー、
「場の研究所」の関係者と名刺交換された方を対象に
送付させていただいています。
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場の研究所 定例勉強会のご案内 

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  ホームページ:http://www.banokenkyujo.org/ 

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「〈いのち〉を居場所に与贈して〈いのち〉の与贈循環を生み出そう」 

〈いのち〉とは「存在を続けようとする能動的な活き」である。 

                        (清水博) 

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■2019年7月のメールニュースをお届けいたします。 

 

◎2019年6月の勉強会は「場の研究所」で6月21日(金)15時から19時30分まで開催しました。15時からワイガヤ的に議論を進めて、従来通り17時より勉強会を行いました。

まず、15時からは、今回も、先月に引き続き、勉強会のテーマの内容をより理解しやすいように、研究員の小林研究員から、「やさしい場の理論」を参加者で読みながら議論しました。

この「やさしい場の理論」は「場の研究所」のスタッフだった、水谷仁美さんが清水先生の理論をベースに2015年にわかり易く資料化したものですが、今回は初参加の方もいたことから、既に先月参加された方々は復習の意味を踏まえ、最初から進めました。この資料は、次回も継続して読んでいきます。

 

●小林さんコメント: 

対話の中で印象的だったことは、「やさしい場の理論」本文中の下記の文を受けて、インターネット上のつながりだけでは居場所の〈いのち〉は生成されないのか?という議論がありました。

(注:このコメント内の「・・・」は資料抜粋です。)

 

「”…内在的世界がつながるには、まず居場所に〈いのち〉を与贈して居場所の〈いのち〉を生成することが必要だということです。インターネット上だけのつながりは、まるでつながっているように感じても外在的世界のつながりだけですので、本当にはつながっていいないと思われます。…”」

 

この話のポイントは、内在的世界(暗在的世界)の理解にあるように思われます。内在的世界がつながる、とは、どういうことなのでしょう。内在的世界とは、本質的に見えない(近代科学では観測できない)とは、どういうことなのでしょう。

 

勉強会の対話の中で、清水先生は、「意味を与えてもらえるためには何が必要なのか?」と問われました。「舞台(場)があって、情報に意味が生まれるんです」大切なことは、「未来から現在を見る、全体から部分を見る、居場所から私を見る」ことです。

 

これらを合わせて、改めて、自己それぞれの内在的世界(暗在的世界)は、何が大切なのか、自分の身において考えてみることが必要なのではないかと思いました。

 

 

以下、今回のサマリーになります。


「やさしい場の理論」から

「#02 〈いのち〉について

#03 外在的世界(明在)と内在的世界(暗在)

#04 近代文明の命の概念と場の理論の〈いのち〉の概念

#05 居場所とは:構造を卵モデルでみる」

(ここまで、詳しくは、先月のメールニュースを参照して
ください。)

加えて、この日は、以下を読み進めました。

 

「#06 居場所に〈いのち〉が生成されるには

居場所のどこにでも〈いのち〉があるわけではありません。
私たち生きものが〈いのち〉を生成させるようにしないと
居場所に〈いのち〉は生まれないのです。」

 

居場所に〈いのち〉をどう生み、何が起こるか説明したいと思います。

1)与贈をする

まず居場所に〈いのち〉を生むために“与贈“をする必要があります。

“与贈”とは、贈り手が自己の名をつけずに贈ること。個人としての活きを抑え、その居場所のものとなって居場所のために〈いのち〉を使うこと。」

 

2)居場所に〈いのち〉が生まれる(内在)

生きものたちが居場所に与贈をすることで、居場所の〈いのち〉が生まれます。」

 

3)居場所で自己組織がおこる

生きものたちが与贈をした〈いのち〉が、居場所で自己組織的につながることで、居場所の〈いのち〉がうまれます。」

 

 

4)居場所から与贈される

居場所で自己組織がおきて居場所の〈いのち〉が生まれると、今度は居場所から生きものへ、その〈いのち〉が与贈されます。ここでいう与贈とは、生活の舞台となる場が“〈いのち〉のシナリオ”と共に届くことです。」

 

5)生きものが場を介してつながる

明在的世界ではつながらない生きもの同士が、〈いのち〉の自己組織によって生まれた場を媒介することで、内在的世界でつながることができます。」

 

このように、居場所に居場所の〈いのち〉が生成されることで、居場所で

〈いのち〉の自己組織が起こり、内在的世界でつながりながら、さらに

〈いのち〉の与贈を次々と繰りかえすことを”〈いのち〉の与贈循環”と

いいます。」

 

 

以上。

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★17時からの清水先生による勉強会

 

テーマは「順行性の行動と逆行性の行動」ということで、先生が作成されたプリントをベースに進めました。

これまで、先生がテーマとして、「生きている」ことから「生きていく」ことへの考え方を時間に関係づけてさらにわかり易くするために、順行性と逆行性という表現で説明されました。

 

その中で、1982-87年に開かれた「バイオホロニクス」という研究プロジェクトの専門委員を当時清水先生がされていたこともあり、そのプロジェクトでの研究を映像に記録したヨネ・プロダクションの人が映像のDVDを持参されて、勉強会で解説を依頼されました。清水先生は、証明はできないけど、生体の中で免疫を担当するマクロファージの行動をみると、場に誘導されて相互誘導合致という法則で行動している可能性もあるという話をされました。

 

その相互誘導合致を、誘導を受けるマクロファージから見ると、場によって見当識を与えられて行動していることになり、これは人間が大脳旧皮質の海馬の活きによって見当識を得て、場所的な空間を行動することに対応するとのことです。アルツハイマー型の認知症では、海馬の機能が衰えて、この場所的な見当識を失われるために徘徊します。見当識にしたがって行動することが未来の方から現在を見て行動する逆行性の行動であり、感覚器で認識することができる情報を得てその目標に向かって、つまり現在の方から未来の方に向かって行動することを順行性の行動と名付けて、次のような資料にしたがって説明されました。

 

では、先生の資料を紹介いたします。

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「順行性の行動と逆行性の行動」

私たちが何かをつくるときには、部分から始めて目的とする全体をつくっていきます。

そのために、作業の途中では、現在は部分をつくっていて、全体はいつも未来にあるという関係になります。初めての物づくりでは、どのような未来が自分を待っているかは、現在の自分には分かりません。そのために、どのように進めば
よいかも分からず、迷路を進むような状態になってしまうこともあります。その時に、全体は大凡このようなものだというイメージがあれば、それが作業の進行に見当を与えますから、見当識と言われるのです。

 

人間や動物の大脳で、場所の見当識をあたえる役割をしているのが大脳旧皮質の海馬であり、そして進行方向を決定しているのが新皮質の前頭葉です。アルツハイマー型の認知症ではこの海馬の機能が失われるために、場所に対する見当識がなくなって徘徊がおきると言われています(小澤勲『痴呆を生きるということ』岩波新書)。

 

家族が居場所としての家庭で、生活という「〈いのち〉のドラマ」を共に演じながら生きていくときには、ほとんど迷わずに、自分が現在すべきことをしていくことができます。それは「この状況の下では、自分は何をすべきか」という見当識が生まれているので、その見当識にしたがって行動していくからです。このことを分かりやすく表現しているのが、私の「鍵穴と鍵の相互誘導合致モデル」です。鍵穴の形が居場所の状況すなわち居場所に生まれる場を表現しています。

 

その鍵穴の形に自己の状態に相当する鍵の形が誘導されていくことが、自己(新皮質)が場(旧皮質)から見当識を受けて行動することに相当します。相互誘導合致は鍵穴に相当する場が鍵に相当する自己に見当識を与えて、その居場所における自己の状態を誘導していくことに相当します。

(自己の状態が変化すれば、それに応じて場も変わるので、場と自己は相互に誘導し合うことになるのです。)

 

大脳新皮質で生まれる人間の論理は一口に言って、部分から全体を組み立てる物づくりの論理です。それは現在から未来へ進む順行型の論理です。これに対して、見当識は全体の方から部分に活きかける、つまり未来の方から現在に活きかけてくる逆行型の論理です。場から始めると言うことは、この逆行型の論理で行動するということです。このことから家庭における〈いのち〉のドラマは逆行型の論理で演じられていく即興劇であると言うことができます。

 

居場所の未来の方から現在の状況を逆行的に見る、場の方から自己の存在を捉えるということは、どうしてできるのでしょうか。それは自己と居場所の関係によって決まります。部分の方から全体を見ることは、現在から未来の方を見ることに相当します。その逆に全体から部分の方を見ることは、未来から現在の方を
見ることに相当します。自己(部分)と居場所(全体)が分離していれば、部分の方から全体の方を見ることになるので順行型の論理が、非分離であれば全体の中に部分を捉えることになるので逆行型の論理が現れるのです。

 

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■2019年7月の勉強会のご案内

7月も従来通り、第3金曜日に大塚の「場の研究所」で勉強会
を開催いたします。
◎日時:2019年7月19日(金曜日)
 15時から19時30分までの予定です。
(従来通り15時からワイガヤ的に議論を進めて17時より
 勉強会を行います。)

◎勉強会テーマ:
仮題:『夜と霧』:強制収容所と〈いのち〉の与贈 

 

場所:特定非営利活動法人 場の研究所
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
Email:info@banokenkyujo.org

参加費:会員…5,000円 非会員…6,000円
申し込みについては、毎回予約をお願いいたします。
  (なお、飛び入りのお断りはしておりません。)

■編集後記
今回も、15時から「やさしい場の理論」について、資料の読み合わせをしながら、場の理論のベースの考え方をゆっくり理解していきました。初めての参加の方もいらっしゃったので大変良かったと思います。この資料は来月も継続しますので、興味のある方は是非、ご参加ください。。

 

また、清水先生の勉強会は、研究所側のメンバーも入れて約20名と6月に続き、多くの方の参加をいただき、お互い密な雰囲気で議論ができました。

最近は、初めて参加される方が、既に清水先生の本を読んでからご参加くださっていることから、大変理解度が高いという印象を受けました。皆さん終了後も議論が個別に続いていたり、勉強会の感想としてとても来て良かったという声もいただきました。

今後もこのような勉強会を継続していきたいと思います。

 

7月は第3金曜日の7月19日に勉強会開催です。

是非、ご参加ください。

 

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★なお、毎月第2水曜日に開催している「哲学カフェ」も4月から開催しておりますので、是非ご参加ください。

次回は、7/10(水)14時からとなります。

 

主旨は、1月のメールニュースに掲載した通りですが、再度お知らせします。

<告知>

「哲学カフェ」 -「解くべき問題」の発見のために-

-場の研究所の哲学カフェは、各自の「解くべき問題」の発見や話題となった哲学を「自分の生活の哲学として使いこなせること」などを目的としています。また、哲学的な話ができる人々との出会いの場となることも期待する一つです。-

 

◎開催日時:毎月第2水曜日 14:00から17:00

◎場所:場の研究所(地下会議室) 

 特定非営利活動法人 場の研究所

 住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3

 TEL:03-5980-7222

◎会費:2000円

◎参加申込方法と詳細:

下記「場の研究所の哲学カフェ」ページをご覧ください。

また、参加申込は、同ページ申込フォームよりお申込ください。

https://www.banokenkyujo.org/cafe/

 

 

定非営利活動法人 場の研究所
住所:〒170-0004 東京都豊島区北大塚 1-24-3
電話・FAX:03-5980-7222
Email:info@banokenkyujo.org
ホームページ:http://www.banokenkyujo.org