今回の「福島からの声」は、合同歌集「あんだんて」から根本洋子さん(詩人みうらひろこさん)の短歌をご紹介させて頂きます。
コロナ禍が続く世界情勢の中で、ロシアのプーチン政権による狂気に満ちたウクライナ侵攻という極めて深刻な問題が、今、世界に向けて突き付けられています。
中でも、ウクライナの原発が戦争に利用されているという事実は、原発の危険性を人災という視点から更に炙り出してきているのです。
共存在から遠ざかって自分(自国)の利益のみを拡大させていくところに、豊かな未来は
ありません。戦時下での電源確保、CO2排出という環境問題を逆に盾にして、事故後、未だに汚染水の処理の方向すら明確に見えていない原発の稼働の推進を私たちは決して許してはいけません。
現状から目を逸らさず震災後11年経った今だからこそ、故郷に帰れぬ人々の無念の声を聴き逃さないよう、しっかりと耳を傾けながら、この厳しい時代を乗り越えていく一歩を踏んでいかなくてはならないのだと思います。
本多直人
合同詩集「あんだんて」十三集より
根本洋子
“復興”を“コロナ禍五輪”といつの間にスリ替えられて幕は閉じらる
いいわけ五輪
ふる里に帰れぬままに夫は伏す終いの住み家となりし中古家に
東電の社長いくたり変れども企業体質変わらぬ十年
*汚染水浄化設備破損の原因究明せず放置
かりそめの住いに馴染めず夫はまだ帰る気でいる汚染の古里へ
総裁選どなたになっても福島の復興加速で進めてほしい
泰山木と教えてくれしその老女は避難地で逝くを知るは悲しも