福島からの声 202年09月号

今回の「福島からの声」は、詩人みうらひろこさんの詩集「ふらここの涙~九年目のふくしま浜通り~」から「避難解除」という詩をご紹介させて頂きます。

ロシアによるウクライナ侵攻は既に半年を迎え、その終息は見えないどころかますます混迷を深めています。その中でもザポリ-ジャ原発を盾にするようにして攻撃が行われているという驚くべき現状からは人間の愚かさしか見えてきません。

また、福島の原発事故に学んで脱原発に舵を切った国でさえ、エネルギ-供給の不足から、そのプロセスに足止めをするような動きが出ています。

日本では、この戦争の影響によるエネルギ-不足、そして脱炭素の波を利用するように、原発新設への方針転換がなし崩し的に進められていることに怒りと強い憤りを覚えずにはいられません。

私たちは、このような時だからこそ「福島からの声」が世界に届けることが重要であると思っています。決して風化はさせない、かき消されてはならない、むしろここから始まるのだという想いで今回の文章を書いています。

今回ご紹介させて頂く詩「避難解除」は、居場所の〈いのち〉が奪われるということが、私たちにとって一体どういうことなのか?が、故郷の暮らしを歴史的に支えてきた「堤」、「ため池」という身近なところから表現されており、肌感覚で放射能汚染の深刻さを感じることが出来ると思います。私たちは、常に、厳しく問題に向き合い、「民の声」と共に、その反省の上に立って未来を描いていかなくてはなりません。 

 

 本多直人


避難解除

みうらひろこ

 

 

民の声はいつも風にかき消される

『帰っても良し』

威圧的な国からの指示

民の声はあらがうように私語ささや

生活のメドが立ってません と。

大、小合わせた三千堰以上、ともいう

この地方に点在している堤やため池

それらの水底には

とてつもなく濃度の高い

放射性物質を含んだ土が

澱となって蓄積されているという

堤やため池の除染は非常ヽヽ困難ヽヽとか

町のそちこちに点在している

堤やため池と隣り合わせの住居に

『帰っても良し』とはまったくはぁ。

厄介ものとなった堤やため池は

四百年以上も前

この地方を襲った飢饉のため

二宮尊徳(金次郎)の高弟による

のちに〝二宮ご仕法〟とよばれ

豊かな実りの大地へと化した

恵みのため池、堤であったのだが、

2011.3.11、原子力発電所の事故で

放射性物質が風に運ばれ

見えない雨となって あの一帯へ降り注ぎ

ため池や堤の機能までをも奪ったのだ

見て見ぬふりされている極悪の現実

「帰りたいけど 帰れません」

風に背を向けか細く私語ささやく民の声