福島からの声 2016年5月

今月の「福島からの声」は、みうらひろこさんの詩集「渚の午後」連載第4回目です。

 

4月に起こった熊本地震。

その甚大な被害は、私たちに「地震国としての日本」を改めて自覚させ、原発の在り方を強く問うものとなりました。

 

今回ご紹介させて頂くみうらさんの詩「絶対という危うさ」は、まさにこの「絶対」ということが成り立たない厳しい自然の舞台の中に生かされている私たちが、これまでのような無責任な安全神話の上に立つ表面的で刹那的な「安全」の在り方を深く反省し、どのようにすれば、未来の子供や孫たちにまで、ほんとうに安心して暮らしていけるような

〈いのち〉の舞台としての居場所を築いていけるのかを深く問いかけさせてくれています。

(本多直人)

 


絶対という危うさ

 

太平洋戦争中

世界に誇った戦艦武蔵が

フィリピン沖の海底で見つかった

絶対沈んだりしないと信じられていた

あの最強の船に乗務する事が出来た

その誇りと栄光を

元海軍であったという高齢の方が

回想されていた

戦艦武蔵は攻撃を受け

七十年ものあいだ海の底で眠っていたのだ

今度の原発事故にも

似たような事が言えるのではないか

絶対大丈夫という安全神話

七メ-トルの津波対策に胡坐をかき

絶対安全だと言いつづけてきた会社

千年前、いや四百年前にも

とてつもない大津波があったことの

警告を無視し

想定外の津波だったからと言い募った会社

十五メートルを超えた津波に

原発建屋は呑みこまれ電源喪失

これが原因のメルトダウン、そして水素爆発

おびただしい放射能から

全町、全地域あげての避難

一家離散、最悪の環境での避難生活

 

四年前のあの時を思い出すとき

中国大陸から敗戦の日本へ引き揚げてきた

まだ若かった両親と幼なかった自分が

重ね合ってしまうのだ

私は一度ならず二度も

似たような体験をしてきた

未だ収束もしてない原発事故の

危うさと隣り合っているから

もう三度目の体験なんかはごめんだ

しかし絶対という保証はない

他国からのテロ攻撃

いや、老朽化している

日本の原発のどこかが爆発

それとも第三次世界大戦が懸念される

憲法見直し案と九条が揺れはじめている

絶対そんなことはありませんと

おっしゃっている方へ

私達は絶対という言葉の危うさを知っている

原発再稼働反対

若者を再び戦場へ送り出さないで欲しい

ぜ っ た い!