福島からの声 2017年10月

今回の「福島からの声」は、南相馬の短歌会「あんだんて」の合同詩集(第九集)から、根本洋子さん(これまで掲載を頂いてきたみうらひろこさんの本名です)の短歌をご紹介させて頂きます。

今回ご紹介させて頂く「避難解除」を題とする短歌からは、原発事故によって故郷を奪われた方々、お一人おひとりの異なる複雑な心の内が、とても重く伝わってきます。

ライフラインの整備や除染によって避難解除することは出来ても、あの時に止まった居場所の時計、心の時計は簡単に動き出すことが出来ないのです。

原発事故は、単なる震災の事故ではなく、人間や生きものの「生きていくための居場所」を根こそぎ奪い取ってしまう、人類が犯した最悪の犯罪なのです

読者の皆さんには、是非、この短歌をじっくりと心に響かせて読んで頂き、今も続いている皆さんの苦しみを、深く感じてとってほしいと思います。(本多直人)


避難解除

 

仮置場の 設置にためらう人あれど 夫は真先に承認印押す

 

現状の ことなど何も知らぬ人は 帰るんでしょうと軽く口にす

 

ふるさとの 景色の一つ原発の 排気塔見ゆ海岸沿いに

 

声荒げ 反対意見もとび交いて 避難解除す説明会場

 

町長は 手に力こめ合図する 復活初発の下り列車に

 

六年ぶり 仙台・浪江がつながって 「お帰りなさい」常磐線よ